柿の葉ずしを創り続け、地元住民からも愛され続けて40余年。

市町村別で柿の生産量日本一を誇り、まさに”柿の町”と言える奈良県五條市で、柿の葉ずしに情熱を注ぎ続ける人がいます。

今回は、奈良県を代表する郷土料理で、今も変わらず多くの人に愛される「柿の葉ずし」をこだわり抜いた素材と製法で提供されている「株式会社柿の葉ずしヤマト」の代表取締役、宮倉 靖幸さん(以下、「宮倉さん」)にお話をお伺いしました。

奈良県五條市で柿の葉ずしの製造、販売を行う「柿の葉ずしヤマト」

ーーはじめに、業種や事業内容についてお伺いしてもよろしいでしょうか?

宮倉さん:地域の名産である「柿の葉ずし」の製造販売業が柱となっていまして、そこから波及した仕事も行っております。柿の葉ずしを召し上がっていただくためのレストラン作りが事業の始まりです。

どうせ五條市に来ていただくのでしたら、観光バスでたくさん来ていただいたお客様を対応できるような場所があってもいいかな、ということで五條本店を建てさせていただきました。

事業内容としては柿の葉ずしの製造販売以外に、レストランの運営と仕出し業務もさせていただいてます。

”どのような会社か”については、昭和44年に創業してから約50数年といったところで、父が創業者で私が2代目になります。柿の葉ずしヤマトの前身は『ヤマト給食』といって、給食仕出し業から柿の葉ずし業へ参入してきたという流れになります。

柿の葉ずし『夢宗庵』という名前ですが、私の父の名前が”宮倉宗次郎(そうじろう)”というんですけど、宗次郎が夢に描いていたお店という意味で、この宗次郎の「宗」を取って『夢宗庵』と名付けられました。

自社で柿の葉ずしを販売するだけではなくて、卸しで対外販売もさせていただいて、全国発送もさせていただいております。

ーー創業されてから50数年で、お父様が創業されたということですが、創業されたきっかけを教えていただけますでしょうか?

宮倉さん:私の父は大阪市内の出身で、母が五條の出身なのですが、縁あって結婚しまして、母が大阪に嫁ぎました。当時、私の祖父がいわゆるアパレルですかね、衣料に特化したお店をやっておりまして、婦人服も置いていれば子供服も置いて、肌着もあって、当時は足袋とかも置いていたんですが、そういったお店を大阪市内で3、4店舗経営してたんです。

で、父親もそれを手伝っていたんですけど、料理の仕事をしたくてというか、きっかけがありまして、それで母と共に子供を連れて五條にやって来て、事業を始めたということですね。

ーでは、お母さまの実家が五條だったから五條で創業されたということですか?

宮倉さん:それもあるんですけど、母方の祖父が山林業と鉄工所をやっていて、その取引先の方が大きな工場を建てるにあたって、「社員食堂をやってくれる人、誰かおらんか?」みたいな話で、父が飛び出して五條に来たというのがきっかけだったみたいです。

それがヤマト給食、つまりは工員さんの食べるお弁当作りのスタートとなっています。

そこから仕出し業をやるようになって、昭和50年代には五條市の米飯給食の仕事もやるってなって、銀行からお金も借りて米飯の事業を始めたんですけど、売り上げとか資金繰りが大変で売り上げが足りないという中で、せっかく炊飯のラインを手にしたのでそれを活かす仕事として、柿の葉ずしの仕事を始めたという流れになっています。

”ハレの日のごちそう”長く愛され続ける五條の郷土料理「柿の葉ずし」

ーー”柿の葉ずし”はどれくらい前からあるんですか?

宮倉さん:江戸時代の中期からあるといわれています。

ーー米飯をしていたから柿の葉ずしにしようとなったのは、やはり五條に柿がたくさんあったからですか?

宮倉さん:いや、その当時から柿の葉ずしを販売している会社もちょっとあって、たまたま連続してごはんを炊く施設があるもんやから、それに合ったお商売ということで柿の葉ずしが早かったんじゃないのかな、と思います。

それで柿の葉寿司の製造を始めたところ、その分野がだんだん大きくなっていって、いつの間にかそれが本業になってしまったということです。

ーーサービス内容とどのような商品があるかについて教えてください!

宮倉さん:メイン商材は柿の葉ずしですけど、言っても寿司屋なので、お買い求めに来られたお客様のニーズに合わせて、一般で食べられている巻きずしであったり、ちらしずしであったり、押し寿司であったりといったものもお出ししています。

観光で来られる方もございますので、お寿司だけでなく五條市のお土産品も揃えています。

ーー商品やサービスにはどのようなこだわりを持たれていますか?

宮倉さん:レストランで柿の葉ずしを出すんですけど、ただお皿に盛るのではなくて、5個入りの木箱を作って柿の葉ずしの風情を楽しんでいただく試行を凝らしたりだとか、お料理を召し上がっていただく時に旬のお花を題材にした季節感のあるランチョンマットを使ったりだとか、来られたお客様に少し喜んでいただけるものがあればいいかなと思い、長年続けています。

それが好評をいただいてまして、敷かずに持って帰られるお客様もおられます。

ーー味覚だけじゃなくて視覚からも楽しんでいただいているということですね。

宮倉さん:そうですね。どこまで出来ているかはわからないですけど、目指しているという所です。

ーー宮倉さんのおすすめのサービスや商品はありますか?

宮倉さん:この1月に商品ラインナップをリニューアルしたのですが、何か特色出していこうかということで、新たに始めた”ちらしずし”が好評ですね。

ーー定期的にリニューアルされるんですか?

宮倉さん:そうですね。私、飽き性なところがあって、商品を作ってもすぐ新しいのをやりたくなるというか…。

ーチャレンジ精神が旺盛なんですね!

宮倉さん:柿の葉ずしのパッケージはそのままなんですけどね。それ以外のものはちょこちょこ変えたりします。

新型コロナウイルス感染症の影響で忙しさも落ち着いてるので、これを機会にできることをやろうかということで、社員の子と「ああでもない、こうでもない」と試行錯誤してきたところはありますね。

料理とかそういったところに、五條としてのスパイスをもうちょっと入れていけたらいいなと思いますね。

奈良県五條市に長く根付いて感じた ”これまで” と ”これから”

ーーどのようなお客様が多いですか?先ほど観光バスでも来られるとのことでしたが。

宮倉さん:観光で来られる方は、年齢問わず幅広い層の方が来られます。

ーーそれは県外の方でしょうか?

宮倉さん:そうですね。同時に地域の方も会合やお昼での利用、会社関係であればお客様をお連れになって来られますし、用途は色々ございますね。

ーー今日もたくさんの方が来られてますね!

宮倉さん:地域の皆さんに可愛がっていただいて感謝しています。

ーー現在課題に感じていることはございますか?

宮倉さん:これは五條市を含めどこも言えることだと思うんですけど、やはり人口減少ということで人の確保が大変ですね。

ーー人の確保ということで、どうしても交通の便に関して「五條はなかなか整備が…」との声がありますが…。

宮倉さん:高速道路が整備されて、大阪や和歌山、京都に行くまでの時間が短くなったんですけど、一方で観光客は素通りしてしまうというのをよく言われるんですよね。

ですから五條には楽しい所があるので、あえて五條に来てもらう仕掛けをしていかないとあかんかなと思いますね。

でも、その反面良いなと感じるのは、五條の近くの大きな観光地として例えば「吉野山」や「高野山」とかがあるんですけど、そこに行こうと思うと高速を降りてから吉野山の上に行くまでに結構距離ありますし、高野山も高速を降りてから山の上に行くまで結構時間かかりますけど、五條って高速降りたらすぐ新町通りに行けたりするので、そういった利便性を活かすことも一つなのかなとも思いますね。

五條は、吉野・高野山に行く前に食事や休憩をここで取ってもらうなどといった、仕掛けをしやすいエリアじゃないかなと思ったりもしますね。

ーー大阪からだと10時くらいに出たら、ちょうどランチの時間帯に五條市に着きますし!

宮倉さん:そうなんです。だから4月なんかは関空から吉野山に行くバスがあるんですけど、五條でお弁当を積んで吉野山に行きますから。混むと大変なんで、そういう面で五條って便利なんだなと思いましたね。

ーー近くに世界遺産的な名所もありますし!

宮倉さん:そうですね、そういうための経由地というか。だから五條の語源は「五条(五つの条(道)」とも言われていますからね。

ーー新型コロナウイルス感染症の影響はどうですか?

宮倉さん:それは大いにありますね。売り上げは少ししんどいですけど、利益的なことを考えるとそんなに悪くないんですよね。

というのも、新型コロナウイルスが流行している間に社内改革的なことを進めてきたので、「またこれで回復してくれたらいいな」というのんびりした感覚ではおるんですけどね。

ーー先ほども1月のリニューアルのメニューを社員さんとお話されたと仰ってましたね!

宮倉さん:新型コロナウイルスの影響下だからできた、っていうのもありますね。

ーーテイクアウト事業の方はどうですか?

宮倉さん:テイクアウトでお弁当をやっているんですけど、それもよく売れています。そこそこ数を作ってるんですけど、早くに売り切れになったりしますね。

ーーそういうのも含めて今後のビジョンや挑戦したい事はありますか?

宮倉さん:地域の特産物の柿の葉ずしを、この先の時代にどうやって伝えていくかということですね。柿の葉ずしも私が子供の頃作っていた柿の葉ずしっていうのは、もっとごつごつしてて、ちょっと匂いもきつくてね。

ーー柿の葉の・・?

宮倉さん:そうです、柿の葉の。子供の時に、祖母とか母親が柿の葉ずしを作っている風景は心に残ってるんですけど、その時は酸っぱいだけのイメージがあって、あんまり好きではなかったんですね。だけど今は一個ずつ形も揃って、きれいに並んで、見た目もいいですよね。

これまでの柿の葉ずしはさばとさけが中心でやってきましたけど、最近は取引先の要望で鯛や海老、椎茸で作ったりと、色んなことをしていまして、自分たちが作りながら「これでいいんかな…」と悩むんですよね。

「本来の柿の葉ずしから離れてるんじゃないのかな」という。

ーーそうですよね。

宮倉さん:だから、もしかしたらこれからはもっといろんなことが起こってくるかもしれないし、変わっていくのがひとつの食文化かなとも思いますが、一方で昔のままを続けていくっていうのも大事なことかなと思うので、だからその狭間で悩むことがありますね。

ーーそうですね、バランスが難しいですね。一つの商品があって、そこから波及していくのももちろん大事だけど、元々のところを守るっていう。難しいですね…。

柿の葉ずしヤマトへのインタビューpart2ではお客様との感動エピソードも!

今回は「株式会社柿の葉ずしヤマト」の代表取締役、宮倉 靖幸さんにインタビューさせていただきました。

part1では柿の葉ずしヤマトの歴史や事業内容、地域の伝統食文化「柿の葉ずし」の魅力などについてお話しいただきました。

part2ではこれから挑戦したいことやお客様との感動エピソードなどについてもお話いただいておりますので、ぜひpart2もご確認ください。

会社名

株式会社  柿の葉ずしヤマト

住所

〒637-0062
奈良県五條市黒駒町164

事業内容

・柿の葉ずし及び食品の製造、販売
・レストラン業
・仕出し料理業務
・お土産販売

取材店舗

柿の葉ずしヤマト 五條本店 大和鮨 夢宗庵

【住所】
〒637-0042
奈良県五條市五條3丁目2-2

【電話番号】
0747-23-1955

【営業時間】
店頭 8:00~21:00
夢宗庵 11:00~21:30(L.O.21:00)

お問い合わせ(電話番号)

0747-22-8010
受付時間:10:00 ~ 17:00(土日・祝日除く)

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