奈良県五條市のシンボル”新町通り”にて、五條市の野菜を使った料理で地域の方や観光で来られた方に驚きと感動を届けているお店があります。

それが『五條 源兵衛』です。

今回は地元・五條市の野菜をこよなく愛し、おもてなしの心で来た人を”笑顔”にする『五條 源兵衛』の料理長、中谷曉人さんに(以下、「中谷さん」)にお話をお伺いしました。

江戸・明治期の建物が軒を連ねる五條新町通りで、築250年の商家を受け継ぐ和食レストラン『五條 源兵衛』

ーーはじめに、業種や事業内容についてお伺いしてもよろしいでしょうか?

中谷さん:『株式会社あすも』という飲食部門と宿泊部門の2つの事業を行っている会社の代表をしておりまして、飲食部門では『五條 源兵衛』という野菜のレストランを、宿泊部門では指定管理として『旅宿 やなせ屋』という宿泊施設を運営しています。

ーどのようなサービスを提供されていますか?

中谷さん:発足当時は”地域の活性化”という形で「将来、地域の方に何か貢献できるように事業体を作っていこう」ということで会社を立ち上げ、現在では地域の食材を使った料理で他府県や地域の方をおもてなしするレストランとお客様が宿泊して頂ける町家の一棟貸しを行っています。

五條市に旅行に来た人がホテルに泊まるのではなく、五條市を体感して”この地域が良いから、ここに移住してみたい”と感じてもらえるように、”暮らすように旅する”がテーマの体験型施設として、一棟丸々貸し出している『やなせ屋』を運営しています。

ーー『源兵衛』と『やなせ屋』という2つの事業体がありますが、主にどのような方がご利用されていますか?

中谷さん:コロナ以前は関東の方が50%くらい、あとは関西圏の方が3割くらい、地域の方が1割あるかないかくらいで、企業さんの接待で使っていただくこともあります。残りの1割は海外の方がいらっしゃるという状況ではあったんですけれども、コロナ禍で関東の方がほとんどいらっしゃらなくて、ここ1、2年に関して言うと、どちらかといえば奈良県民の方が一気に増えています。


奈良県内の方で五條に来た事がないという方が、ホテルだと他人と接することで感染リスクがあって不安だけれども、一棟貸しであれば誰とも出会う可能性がなく、自分たちだけのお家という感じで、安心して宿泊することができるという理由で利用される方がちょっと増えましたね。

ーーじゃあ新型コロナウイルス感染症の影響によって利用される層も変わってきたということですね。

中谷さん:そうですね。まあ新型コロナウイルスの蔓延を想定して始めた事業ではないけれども、なぜか時代がフィックスしてきたという感じですよね。

ーーそうですよね。ほんとに今は人と会わずにというのが主流というか。

中谷さん:そうですね。そうしないと事業が成り立たないといいますか、やっぱり安心して来ていただけないですよね。いくら感染対策や感染予防をしてるとは言えども、安心材料にはならないので、来る方がお金を出す価値として知らない人と会わずに食事や宿泊を楽しめるというのがあるんじゃないかなというのは、ここ1年くらいでは感じますね。

ーーこれまでは奈良県内の方がなかなか五條に訪れる機会がなかったのに、今は新型コロナウイルスの流行がきっかけで奈良県内の方が五條市の魅力を再発見できたような感じがしますね。

中谷さん:そうですね。あとは昔からですけど、食べるために泊まる方も多くなったので。

「レストランで晩御飯を食べた後、何で帰ろうか。お酒も飲んだ場合はどうしようか」となった時に、「もう泊まろうか」と考える方が、近年増えていると言いますか。

あとは昨年もそうですけど、JRさんとタイアップさせてもらって、『駅プラン』といって列車のチケットと食事代がセットになったプランがあるんですね。そういうので取り上げてもらったおかげで、お昼にJRで五條市に来て、源兵衛でちょっとお酒飲みながらカジュアルなコースを食べて、次に来る時はもう絶対に泊まって帰りたいっていう。

なので、「こちらはレストランの宿泊の分のご説明ですよ」ということで、レストランに必ず『やなせ屋』の案内ブックを置いているんですけど、皆さんレストランに来られた時に宿が目に入るんですよね。

で、源兵衛に来られた時に宿を見ていただいた後、ネットを見て、「一棟貸ってこういうことなんだ」ということが分かって、改めて宿も予約いただいて。だから見込み客が既にレストランで集まってきてて、そこから「ぜひまた五條市に来てほしい」「次は夜に来るのが良いですよ」「また違う季節に来ると良いですよ」といった提案ができるのは、宿を持ってるからこそできることですね。

ー仕組みづくりがしっかりされていますね!

中谷さん:会社としての仕組みづくりのおかげですよね。あとは地域の方々が何十年という建物とかを保全してくださったおかげで、その建物を僕たちは活用させていただいてるので。この先はどうなっていくかは別ですけれども。

レストランであれば築300年、やなせ屋でいえば築70年の建物を活用していて、僕たちはせめて倍はいきたいなと思いますよね。

ーー600年!?

中谷さん:そうですね(笑)まあ死んでると思いますけどね(笑)生きてはいないと思いますけど(笑)

ーーでも『源兵衛』や『やなせ屋』の建物が今後も受け継がれていくのが中谷さんのご希望?

中谷さん:そうですね、要するに”つなぐ”ということですね。レストランの建物も移築なしで300年保たれているのであれば、あと300年いくポテンシャルがあるわけですよ。

ー今から300年?それは手を加えるんですよね?

中谷さん:管理さえすれば、手を加えずともあと300年はいけると思います。

なので商売がずっとこのまま続けられたら良いなと思いますけど、業態を変えたとしても建物が残って行けば、五條という土地柄からしても歴史的に凄いと思います。

ーーそうですよね。300年といえば山本酒造さんも300年くらいですもんね。

中谷さん:そうですね。あとは栗山さんのお家(※日本最古の民家「栗山家住宅」)がダントツ古いので。1607年だったかな?日本最古の民家ですから。そういう意味では五條市にはすごい宝物があるんですけれども、意外と五條に住んでる人は「何もない」と感じているのが通例で…。実際、関東からのお客様が50%くらい占めていた時には、「ものすごいいい街並だね」とか、「本当にここで食べる野菜ってどうしてこんなに味が濃いの?」ということをよく聞かれるんですけど。

地域の当たり前のことを褒めていただいているので、地域の方が特別に感じているものを特別に出すよりも、当たり前のことを少しブラッシュアップして出すだけで、充分サービス提供になるんじゃないかなと思います。

それがサービスかと言うと、地域の方からしたら「当たり前だからサービスじゃない」と言う人もいて、「サービス」の意味からしても少し異なるかもしれないですけれども、「おもてなし」ってことで考えるとうまくハマると思いますね。

ーー内に居ると見えにくかったりするのも、外から来られた方はまた新たな気持ちで見られたり感じられたり、するところなんでしょうね。

中谷さん:その辺、地域内と外でちょっと違うところかなと思いますね。温度差があるのは確かなんですけど、もうお店始めて10数年経ちますが、当初と違ってちょっとずつは地域貢献できてる気がしますよね。

ー私も五條市以外で源兵衛さんの話をしても「知ってる!」っていう人がすごく多くて。

中谷さん:そういうお話を聞くとありがたいですね。ちょっとずつですが、時が経つが故に増えてきているのかなと思います。

ーーそうですよね、今このコロナ禍で奈良の方が県外に行きにくい、この機会にもっと訪れて欲しいなと思います。

中谷さん:奈良の人とか五條の人でも”驚きと感動”を体感できるっていうのが、源兵衛の良いところですね。

ーー驚きと感動。

中谷さん:そうです。今年からは特に価格帯を上げてますが、トリュフとかフォアグラを使っているから高級ですよっていう手段を使わず、五條の食材で10,000円でも15,000でも組めて、なおかつ”驚きと感動”を体感してもらえるというのがうちの強みなので。”食材の組み合わせ”と”食材のそのもののポテンシャルを引き出す”という2つの柱があるからこそ、「普段食べてる食材なのに、なんで味が違うんだろう」っていう風に感じてもらえるようになっています。

「こういう調理します」「農家さんではこういう処理してもらってます」みたいなことは、それができる人がいなければ実現できないですけど、五條市の場合はラッキーなことに農家さんの技術がすごく高いですし、新しいことに挑戦する人もいらっしゃるので、驚きと感動をお届けすることが出来ています。

『五條 源兵衛』でしか味わえない野菜の旨みと地域性。そこから生み出される付加価値とは

ーー源兵衛ではどのようなお野菜をどういう風に使ってらっしゃるんですか?

中谷さん:農家さんたちはちょっと特殊で、自分で子供を育てるときや彼女に接する時のように野菜を育てられていて、その野菜を嫁がせるじゃないですけど、譲り受けるためにはコミュニティが必要なんですよね。

自分で言うのもなんですが、料理人は変わってる人が多いですけど農家さんも変わってる人が多いと思うんですよ。こんな田舎で、しかも誰にも出会わずに畑に行って、野菜と話すわけです。

で、そういう農家の方々から、最高の野菜を分けて頂いたからには、料理人である自分たちもその分けていただいた野菜のポテンシャルを引き出さないと、多分、分けてくれないんですよね。

ーそこの農家さんと中谷さんとの信頼関係も、もちろんあってということですね。

中谷さん:そうですね。あとは初めてお会いする方に関しては他の農家さんからご紹介いただくような形が多いですね。やっぱり新参者で若い僕たちが年配の農家さんと出会うってなると、どうしても距離感がありすぎるので、できれば農家さんから農家さんを紹介してもらって、初めてでもお会いしやすい形を取っていますね。

ただ初めて出会った農家さんから「卸したいです」って言われても、実は僕たちは受けないんですよ。

もともと卸してもらっている農家さんとのご縁があるので、できるだけその距離感っていうのを大事にしています。例えばAさんからもうすでにアスパラをもらっていて、その後にさらに良い質のアスパラを作っているBさんが営業に来たとしても、美味しいか美味しくないかは関係なしに、1番最初の人を優先します。

農家さんっていうのは律儀な方ですから、「他の人からもらえるならもらってくれたら良いよ」って軽く言ってくれるんですけど、本心は「今年は収穫が少なかったけど、来年は多く作りたいな」とか「来年はお店でいっぱい使ってほしいな」とかだと思うんですよね。

農業はどうしても自然との対峙なのですごく大変だと思います。ただ、安定して育てる技術は年々上がっていると思いますので、それを若手の方に継承していけるような地域になればいいかなと思います。

ーーご縁を大切にされる中谷さんですが、中谷さんが農家の方と接する時に心がけていることはありますか?

中谷さん:そうですね、あんまりお金の話はしないですね。細かい注文とかしないかな。

ーー向こうも”源兵衛の中谷さん”ということで身構えたりしないんですか?

中谷さん:今でこそそういう風に言われますけども、全然地域の方とかはミシュランについて知らないんで。僕たちは外に向けてはブランディングしてるんですけど、逆に農家さんをブランディングしなきゃいけないんですよ。

だから、「自分がブランドで、自分を輝かせてくれているのが農家さんですよ」ってなるのが僕は個人的に嫌なので。

農家さんの作物がブランド化していってくれる方がいいんですよね。レストランで使ってるから儲かるんじゃなくて、「五條源兵衛で食べた野菜が美味しかったから、次はその野菜を作っている農家さんのものを買おうか」って、本来はなってほしいんですよね。

その農家さんが「あっ、源兵衛で食べたのおいしかったからちょっと欲しいんです」とか、どんどん増やしていってもらえればと思うんですが。

今までは個人販売よりも出荷するとか、JAさんに出すとかが通例だったんですけど、近年は個人間の取引が多くなりましたので、時代が変わってきて良かったなと思います。ここで美味しかったものを、希望すれば買える可能性が出てくるので。

そしたら農家さんも要するに利益を抜かれないですもんね。自分たちが売りたいものを売ることができる。それで自信があれば金額を上げればいいわけですから。いつまでたってもキャベツが100円200円の訳ではないと思うんですよね。

農家さんが手をかけて育てていれば、本人が500円って言えば500円もらったらいいと思うんですよ。

それでおいしかったら、また500円で買いに来るんですから。

ーー確かに。そこも信頼関係があってということですね。

中谷さん:僕たち料理人っていうのはもう単純なところ、自分で経営してるしてないは別なんですけれども、季節を追うのが多いのでまずは食材の欲しい時期を農家さんにお伝えしてお願いしますよね。

けど、農家さんからしたらすごいプレッシャーだと思うんですよ。もちろん予約を取っているので量も伝えますよね。「明日、明後日までに◯個欲しいです」って。そしたら農家さんは「えっ、◯個いるんや。間に合うかな…」ってなりますよね。

ーー自然の産物なのでわからないですもんね。

中谷さん:もうひとつがサイズ。「このサイズでとって欲しいんですよ」っていう。まずこの3つが1番の気苦労のひとつだと思います。さらに価格帯も言われるんです。「いくらまでに抑えてね」って。となると、農家さんは自分が彼女とかですね、子供のように育てているものを”商品化”してしまうんですよ。

料理人から言われたことによって、農家さんは作らされてるんで。僕はそれが嫌なので「自分たちが作りたいものを作りたいだけ作って下さい」と伝えています。だからって収穫いっぱいできたからもらえるってことは無いんですけど。

例えば肉じゃが作りたいんですと。なので八百屋さんにニンジンとタマネギをお願いしに行って、肉屋さん肉を頼んで、そこから料理して1皿を作るということではなくて、「○○さん、△△取れましたよね」「○○さん、□□取れましたよね」って、農家さんからその日の食材を集めてから料理を考えれば、別に農家さんへの予約は不要じゃないかということで、オープン当初からそうしています。

ーー手順が逆で、メニューがあって食材を集めるのではなく、食材を集めてからメニューを考えるということですね。

中谷さん:だから皆さんにお伝えしにくいんですけど、ひらめきで料理をするので。

ーー野菜に特化された中谷さんだからこそできることですね!

中谷さん:そう言っていただけると、やってきた価値がありますよね。あとは農家さんの畑に入らせていただいて、畑で農家さんと一緒にかじった味っていうのは結構鮮烈なんですよね。

ーーやっぱり違いますか?

中谷さん:まあ空気感が違うというのもあるんですけれども、やっぱりかじったと時のあの鮮烈さは料理で表現しづらくて、かじったあの感動を料理に表現したいと思って10年間料理してきた結果、多分そのままでは難しいから、今、奈良県のオーベルジュ(主に郊外や地方にある宿泊設備を備えたレストラン)という形で出してもらってるんですけど。

「体験型を入れた方がもっとわかりやすいんじゃないか」ということで、宿で泊まってファーマーズ体験をして、採ってきたものをレストランで食べるということを、アフターコロナでしていきたいと思っています。

畑で食材をかじった時の鮮烈さを感じるとなると、レストランでの料理は家にその野菜たちを持って帰った時に、「どうやって調理したら美味しいのか」「何と何を組み合わせたら面白いのか」という”驚きと感動”を表現することで楽しめると思って、それを表現することをここ1、2年くらいは意識してます。

ーー目的があって、それに対してじゃあどうしようっていう道筋が全てイメージされているんですね!

中谷さん:そうですね。なので逆算はかなり考えています。まずゴールありきで行きますので。だから今もお話した通り「300年後」というのをゴールにしているので、そこまでに行くにはどういうプロセスがあったらいいかというのを、短期目標・長期目標として設定している感じです。

だから「今すること」とか「今年しなきゃいけないこと」とか「1年後すること」とか、もうすでに逆算の中で決まってるから、あとは淡々としていくだけなんで、バタバタするって事はあまりないです。数年後を見越して今を動いているので。

ーー目標というか目的がしっかりしてるから、そこに向けて進んでいくという感じですね。

中谷さん:そうです。そこに行くために必要か必要じゃないか、あるいは300年後にこのお店が残ることを想定して、今していることが良いことなのか悪いことなのか、って考えながら。

ーーすごいです!でも答えが出るのが言ったら300年後じゃないですか?それは誰が答え合わせをするんでしょうか…(笑)

中谷さん:僕は”記録に残る男よりも記憶に残る男になりたい”っていうのはそこなんです。皆さんの記憶に残っていれば、「ああ、あいつがあの時こう言ったからこうなったんやなと」(笑)

ーーもう十分残ってると思います(笑)

中谷さん:語り部にできたらいいかなと思います。そして、最終的には皆さんが元気なうちにもう少しお話とかも残したいんですよね。語り部さんが居てる地域の風習や文化を。今はそれらがどんどん淘汰されていってると思うんです。

500回以上続いてる『陀々堂の鬼走り』とかだったら継承されているじゃないですか。「鬼走りが年に1回、1月14日にある」というのは継承されていますけど、もっと民族的な地域の風習だったり、例えばしめ縄もそのひとつだと思いますし、いろんな文化も共に残していかないと成り立たないと思っています。

会社の方針として”文化と共に地域を残す”というのがあって、レストランと宿に関してはまた別であります。レストランは建物を300年残すための方法であって、宿に関しては今だと1日1組とかなので、本当であればもう2、3棟増やしたいと考えています。なので近隣で空いているお家があれば貸していただいて、またそれを若い子がゲストハウスのオーナーとして運営してくれるというのも良いですし。

そういうので雇用が増えて、地域の人たちがまた移住してくるのであれば、もっといい地域になるんじゃないかなと思います。

ーー中谷さんは多くの野菜との出会いがあると思いますが、一番驚いた野菜はありますか?


中谷さん:驚いた野菜で言うと何パターンかありまして、海外の野菜を先駆的に作っている方がいらっしゃって、名前が『プンタレッラ』という魔法みたいな名前なんですけど、トレビスとかと一緒で苦味のある野菜の仲間なんですよ。

なんとなく日本は山菜とかもそうですけど灰汁やえぐみを抜く文化が多くて、それで食べやすくして”香りが淡いのが日本です”っていう文化が多いと思うんですけど、十数年前に田中さんの畑で食べた時は衝撃的でしたね。

「これ食べれるの?」みたいな。(笑)

当初、料理をしてる者からすると「こんな苦いのは苦みを抜いてから食べないとあかんやん」と思ってたんですけど、ここ最近振り返ってみると、「苦い野菜がないと別の野菜は苦くない」ということに気づきまして。

ーーえ?どういうことですか?

中谷さん:要するに、苦いって感じる野菜があるからこそ別の野菜を食べたときに、味の違いがわかるだと。もし世の中に苦い野菜がなければ、多分苦いっていう野菜の表現がなくなるんですよね。

だから、今のピーマンは結構苦味を抜いている子供ピーマンしかなくて、昔のピーマンみたいに苦いのはないと思うんですけど、子供からすると「ピーマンは苦くない」ってなるわけなんですよね。そうなってしまったら、もう”苦み”という五味の1つが消えてしまうんだと思うんです。

ーー「苦い」という概念がなくなるわけですね?

中谷さん:なくなるんですよね。そこから大人になって苦いものを食べたときに、衝撃があって受け入れられなくなるんだと思うんですけど。いかに小さいうちに色んなものを食べているかというのが大事だと思うんですよね。

僕はまさか苦みっていうのがヨーロッパの野菜でびっくりしましたけれども、それが日本で言うと山菜だったり筍だったりすると思うんですよね。

どうしても流通段階で灰汁を抜かなければ食べれない、っていうのはあるんですけど、そうじゃない限りは灰汁やえぐみもあった方が良いんじゃないかなって根本にはあるんですよね。

ー「灰汁とかえぐみを抜かないと食べられない」っていう私たちの先入観なんですね。

中谷さん:ただ、体にとって悪いものもあるので、一概にそれが良いとは言えないんですが。自然界のものは危険なものも多いので、必ず調べていただいて気を付けていただくと。

自分のリスクマネジメントを考えた上で、ビックリした野菜で言うと『プンタレッラ』が過去最大にビックリしましたかね。

ーー私も源兵衛さんで一度いただいた、益田農園さんの『当帰芍薬(とうきしゃくやく)』が忘れられなくて。

中谷さん:当帰は他に例えようがないですよね。マネしようとしてもできないです。

ーーあの葉っぱが出されたときに「この葉っぱを食べるん?」って思いましたね(笑)でも貴重な体験というか。しかも、当帰芍薬(とうきしゃくやく)は婦人系の体に良いという。

中谷さん:だからもしかしたら実は普段から摂ってるかもしれないですよね、女性の方は特に。

ーー衝撃でしたね。あの当帰の葉っぱを食べた時は。ずっと手についた匂いが取れなかったですし(笑)

中谷さん:そうですそうです(笑)

ーーでも忘れられない体験をさせていただきました。

中谷さん:結構、記憶っていうのは香りと繋がることが多いので。

これはちょっとスピリチュアルな話になるんですけどね。結構、”音”と”香り”と合わせて”味覚”もそうなんですけど、大人になっても記憶に残るものを体感してもらえるような場所であればいいなと思います。

五條源兵衛へのインタビューpart2では

今回は奈良県五條市の五條源兵衛(株式会社あすも)の料理長、中谷曉人さんにインタビューさせていただきました。

part1では株式会社あすもの事業や歴史、『五條 源兵衛』で使用されている食材などについてお話しいただきましたが、part2では五條市についてや今後の展望などについてもお聞きしました。

ぜひpart2もご一読ください!

”文化とともに地域を残す”300年後の未来を見据えた「五條 源兵衛」の挑戦とは

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会社名 株式会社あすも
事業内容
  • 飲食業
  • 宿泊業
店舗名

五條源兵衛(和食レストラン)

旅宿 やなせ屋(宿泊施設)

住所 〒637-0041
奈良県五條市本町2丁目5-17
TEL 0747-23-5566
営業時間

【お昼の営業 ※予約優先制】
11:00~12:30(1部)
12:30~14:00(2部)

※お昼の営業は二部制となっております。完全予約制ではございませんが、 予約を頂いた方に確実にお席をお取りし スムーズにお食事頂く為、お早目のご予約が望ましいかと思います。

【夜の営業 ※完全予約制】
17:30~20:30

※夜のお食事は完全予約制となっております。ご予約に関してましては2日前迄にはご連絡を御願い致します。

ホームページ、SNS等

「五條源兵衛」のホームページ

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