この記事は、登録有形文化財 『藤岡家住宅』の管理法人NPO法人うちのの館、館長 川村優理さん(以下、「川村さん」)へのインタビュー記事part2です。

part1の記事ではNPO法人としての活動、事業のきっかけや俳人「藤岡玉骨」の生い立ちなどについてお伺いしました。

今回は五條市に焦点を当て、うちのの館と五條市のかかわりや、『藤岡家住宅』を通してこれから五條で挑戦したいことなどについてお聞きしましたので、ぜひご一読ください。

 

地元の子供たちとのふれあいながらの“教育”

ーー商品とかサービスについてですが・・・イベントとか今は喫茶とかはやっていないんですか・・・?

川村さん:そうですね。地域の郷土博物館としての教育機関になってしまっているような気がします。
そっちにどんどん特化していって・・。

ーーじゃあ地元の学生さんとか、遠方から来られる方が来られるということですね。

川村さん:子供さん達が地域探検に来てくれたり、あと俳句の資料が多いので、俳句会もされますね。この間あったのは、コロナやから合唱できへんから手話の音楽会をしようってなって。テレビでも紹介された100年のピアノがあるんです。そういったものを活用しています。

ーーじゃあ、やっぱり教育に特化した場所になってきましたか

川村さん:そうですね、そうなってきました。

ーーじゃあそういうことを目的とした方がいらっしゃることが多いですか

川村さん:そうですね、句会や音楽会や。・・・ここで俳句を詠みたいとか・・・。子供俳句教室をここでやると、正座して俳句を勉強していたら子供たちの顔つきがキュッと締まるんです。

ーー私あの最近テレビでよく俳句に関する番組を見かけます・・・

川村さん:最近テレビの番組でやってる!!「プレバト」!あの番組のおかげで俳句の人気が出てきてね!

ーー私はテレビとかで見てるだけですけど、俳句は奥が深いなと思います。季語だけでもたくさんありますよね。

川村さん:無茶苦茶あります。

ーーそれをどう表現するのかって・・・秋に代わる季語ていうのでもたくさんあって、それを表現するのがすごいなと

川村さん:子供俳句教室をしたら、子供さんね良い句読み出しますね。

ーー観点が違うんでしょうね

川村さん:そう。なんかね、いくつか決まりあるでしょ。なんていうか・・・締まってくるんです。

五條東中学校でも俳句の講演をさせてもらって、皆さんの作品をコンクールで選ばしてもらってんけど。
なんていうのかな、“おおっ”と感嘆をあげるような作品が出てくる。やっぱり子供さんがそんな文化に触れるのもいいことだと。ここ最近は、速さと利便性を追求する時代やけど、なんていうか・・・ちゃんとしましょう、みたいなところがあるっていうのもいいなぁって。

ーーそうですね。最近は分からないことがあれば調べたらすぐ出てきますけど、ひとつのことに関して考えるとが少なくなってきていますもんね

川村さん:そうなんですよね、なかなかそういう機会もね・・・。この間も、五條中学校さんも写生に来てくれた時に、「この中の何でもいいから一個、写生しなさい」って先生が言ったんですけど。この障子の形が面白いって言う子もいるし、掛け軸そのままそのまま描くっていう子もおるし・・・。
みんな自分で何を選ぶか・・・このものすごい物の中で選ぶってこともすごいんやって。

ーーそうですね

川村さん:技術的に上手下手でなくて、その先生がすごいなぁと思うのが、“いっこ選んで、なんでそれを選んだか考えて描いてね”って言わはるんです。そしたらみんな一生懸命描くんです。私も描いてる子に「なんでそれがええと思うの?」って聞いたりしながら・・・まさに一期一会やと思うんですけど。

ーーそれぞれの感性と観点で・・その時自分が何を描くかで全然違いますもんね、同じところを描いても

川村さん:そうなんです。絵が上手下手ではなく、自分がこの中で何を見たいか何を描くのかって、自分の中で問いかけるというか・・・。写真を撮るのではなく、絵を描くのが子供たちの中で、何かが始まるんじゃないのかって・・・自分で考えるのってすごく大事だなと。

そういった意味でも教育機関になっていってるのかなと。

ーーそうですよね。誰かに教えられて何かをするより・・・

川村さん:そうです。学校の勉強がイマイチ面白くないなって思ってても、やってみようって思う子がいるかもしれないし。

なんかねその・・・私も固まって考えることがあるんですけど、これはこうって。でも「あっこっちから見るんか」ってひとつポンって抜ける時があって。俳句ってこう“一過性の通り過ぎる旅人”っていうんですけど・・これは俳句の世界やなって。

みんなに来てもらって・・・この子がどういう子かわからないんですけど、とにかくみんなちゃんとと座るからかわいくて(笑)。

ーー格式張ったというか、いつもと雰囲気が違うから・・・なかなかこんな畳続きのお部屋のお家もないですし・・縁側もあってって

川村さん:そうそうそう、一度学校の先生に「人数が多いんやったら俳句教室を学校でしましょうか」って言ったんやけど「いやいや、ここですることに意味があるんです」って。

ーーそうですよね。ほんとにここで詠む句は・・・違いますもんね

そうなんですよね、だからそういう場所でずっとありたいなと思います。

“藤岡玉骨”も愛した五條で

ーー今課題に感じている事とか地域性による課題があれば教えてください

川村さん:ほんとはもうちょっと道が広くなってほしい(笑)。来にくいでしょう?

ーーでも文化財的な要素としたら道が広い方がいいのかもしれないですけど、趣があるとしたら路地とかの方が・・・

川村さん:そうやな。

ーー新町もそうですけど、ものすごい通りにくじゃないですか

川村さん:うん通りにくい。

ーーでも、私も最近知り合いの方を新町に案内したんですけど、こんな場所あるんやなって感動してはって。だからここもちょっとした僻地じゃないですけど、タイムスリップした感じがある方がいいのかも・・・・。

川村さん:そうやな。わかったありがとう。
でもたくさん来てもらおうって思ったら・・・バスとかが来れなくて。大型バスは下の大きい道の4車線のところに停めてもらって、私が歩いて迎えに行ったりしてたんやけど。

送迎バスもあったんです。大阪から入札で調達したんですけど、その送迎バスでピストンしてたんやけど、バスが故障してとうとう動かなくなって・・・。

そしたらこないだも歩いて迎えに行ってきたんやけど、やっぱりちょと距離があるので、年配のお客さんとかは足が痛いから無理とかってなるから・・。

ーーそうですね、ちょっと駅から距離ありますもんね・・・。

川村さん:そのへんが今後の課題かな。

 

ーーお客様との印象的なエピソードがあれば教えてください

川村さん:でもこないだバスツアーで来たお客さんが来られて、「あとどこ周るんですか?」って聞いたらここだけやでっていうから、すごいうれしくて。

ーー目的地がここですもんね

川村さん:そう。目的地がここで来てくれたんやっていうのが、無茶苦茶嬉しかった・・。

ーー他にありますか?

川村さん:コロナ前にお礼状いただいて、返事を出してたんですけど、その返事を広陵町の方なんですけど、電車乗り継いでまた持って来てくれたり・・・。

1番うれしいのはここにおったら、お名前も何も詳しいことはわからないんですけど、「あっ、あの人どうしてるんやろう?」とか、ここに来てくれた子供さんでも「あの絵描いてくれた子、おっきなったかな?」とか。来てくれた人は・・俳句の世界と一緒で旅人としての出会いがあって・・。こないだ来てくれた方は、小学校の時に俳句教室で来てくれた子で・・久しぶりに帰ってきたからって寄ってくれたり・・。

ーーそれもご縁ですもんね

川村さん:そういう繋がりが1番うれしいかな。思いがけない出会いというか・・人とか物とか・・。

ーーこれからもまだまだあるかもですね

 

大いなる可能性を秘めた「藤岡家住宅」のこれから

 

ーー今後の展望をお聞かせください。どんな活動していきたいかとか挑戦とかがあれば

川村さん:ずっと考えてるのが、古民家の活用方法というか・・それを迷いながらやっているんですが、古民家っていうメディア・・・全部過去からずっと長い年月の間に、置いてた情報がそこにあって。1つのメディアなんですね。昔からこの家という空間にあるものが。

 

私は古民家が伝えてくるもの、今の時代には教育もそうですし子供たちの姿もそうですけど、古民家っていうメディアというものをすごい意識するようになって。

展示するのも他所から借りずに、この場所にあるもの、情報を整理していくっていうことがその古民家としてのメディアを活かす・・。

そういう古民家が私たちに伝えようとしている・・古民家っていうメディアというのを1つの郷土系の教育機関としてやっていきたいなと思いますね。

ーーなかなかそういう形態というか・・先ほどもおっしゃってましたがモデルケースがない中、いろんなことを可能性としたら秘めていて・・

川村さん:ありますね。古いお家を活かしたいという思いはみんなあって、どう活かすかっていうことが大事で。修理していたらこの下から、古い大事な瓦が出てきたりとかしますし。
おしゃれなカフェでコーヒーを飲みましょうっていうのもありますけど・・・どうしても古いお家って道が狭い・・・。

そういった中で、またこれから何が起きてくるのかわからない・・・。コロナでイベント中止せざるを得なかったり。

だからこっちが利用するっていう気持ちではなくて、ここにあるものをどうやって活用するかっていう・・・その家その家、その文化財その文化財に問いかけるというか・・・。

例えばお掃除して草取りしてたら、何かヒントをくれるんじゃないかとか、自分たちの有り様というか。それぞれの家の性質みたいな。だから古民家の中でも、それぞれの性質があるんで。

ここは家主がすごい勉強したお家なので、教科書もたくさんある中で・・・まだこれからモデルケースとして、古民家というメディアがどんな形に動くのかも、これから探していきたいです。

ーー可能性は止まらない感じですね

川村さん:でも時々考えるんですけど・・・、ここが大きな船だとに思うことがあって。その船は自分の行きたい方向に、多分動こうとしてるんだなと。私はただ、お掃除をして出てきた品物について調べる・・・。
キーワードは“箒と本”やと思ってるんですけど(笑)。

ーーまだまだほんとに楽しみですね
1番最初に“定まってない”っておっしゃってましたが、まだまだほんとにね・・・

川村さん:うん。そうなんですよね。ほんとにわからないですね。だってコロナ自体が想像してなかったですし・・・。

ーー確かに

川村さん:それまでは毎月といっていいほど、ランチサロンや音楽イベントっていうイベント会場になってたり・・・だから観光と教育と両方やったんです。

ーーどうしても情勢とかで強制的に変えないといけなくなってしまうこともありますしね・・・

川村さん:強いられてくるというか・・そこからどうなるのか・・・。
ただここの船に乗ってとにかく毎日をちゃんとやりましょうっていう・・・。

わたしの昔からの目標というか、将来の夢ってよく聞かれるでしょ?将来何になりたいかって。
結局はきれいなもののそばに座ってたいなって思って。ずっとそう思ってたんだなって。そしたらここってすごいいい形のツボとかあるんで、その意味では夢が叶ってるなって思って。

だからなかなかうまいこといかないこともありますけど、できる限り・・どういう動きになるのか自分でもわからないですけど、その船に乗って行きたいですね。